カラスの漢字で、トリより線が一本すくないのはなぜ?という話がありました。
これについて、日本漢字学会会長を務める 阿辻哲次 先生(京都大学 名誉教授)が説明していました。
私たちが当たり前のように目にしている漢字は、約3300年以上前に中国で生まれたといわれている。
古代中国では、王様が神様と交信するために、亀の甲羅や動物の骨に文字を刻んでいた。
この時に使われていた「甲骨文字」と呼ばれる文字が、現存する最古の漢字といわれている。
漢字は、はじめ、神様と交信できる権力者だけが使っていた。
しかし、そこから数千年、文明が発達するにしたがい、いろいろな人が漢字を扱うようになったため、
どこでも誰もが、同じものが書けるよう形が整えられていった。
例えば、こちらは、甲骨文字での「鳥(とり)」という漢字。
鳥の形を絵で描いたような文字だった。
そして、この「鳥」の漢字が、時代の流れとともに、私たちがよく知る漢字になる。
比較してみると、「くちばし」「翼」「足」をそれぞれ表していることが分かる。
カラスの漢字を比べてみると、「目」の部分を表す「横線」がない。
つまり、「烏(カラス)」は、「目がない鳥」を意味している。
カラスは全身が真っ黒なため、黒い目が顔に溶け込んで、目がどこにあるか分からない。
古代の中国でも「目のない鳥」というカラスの特徴を表すため「鳥(トリ)」という漢字から、目を意味する横線を取り除いた、この「烏(カラス)」という漢字が生まれた。
実際に、18世紀に書かれた漢字の成り立ちを表す文献にも、
と書かれている。