ハチミツが花の蜜より甘いのはなぜ?という話がありました。
これについて、ミツバチの生態について研究している佐々木哲彦 先生(玉川大学 ミツバチ科学研究センター 教授)が説明していました。
ハチミツをハチが集めてきただの花の蜜だと思っている人も多いが、そもそもハチミツと花の蜜は成分的に全く別のもの。
そもそも ハチミツは、ハチが生きるために作ってる特別な食べ物で、ミツバチしかハチミツを作ることはできず、人には作れない。
その理由は2つある。
1つ目の理由は、人間が花の蜜をたくさん集めることは不可能。
試しに、ソバの花畑で、
人が8時間かけて、ソバの花の蜜を集めてみると、
集まった量は、たった1滴だけ。
1つ1つの花には、ほんの少ししか蜜が入っておらず、たくさんのミツバチに総動員で集めてもらうしかない。
2つ目の理由は、ハチミツは、ハチとハチがキスしないとできない。
人が花から採ってきた花の蜜とハチミツをなめ比べてみると、どちらも花の蜜なのに、ハチミツの方がはるかに甘い。
ミツバチには、外で花の蜜を集める係と、
巣の中でハチミツを作る係がいる。
蜜を集める係のハチは、花から蜜を採ると、
蜜専用の袋に保管し、それがいっぱいになると巣に戻る。
戻ったハチは、巣で待っているハチに、口移しで花の蜜を渡す。
このキスの時に、ハチのだ液が蜜に混ざる。
このだ液は、魔法の液体で、花の蜜に化学反応を起こさせる。
花の蜜は「ショ糖」という成分でできている。
これは、お砂糖の成分と同じ。
このショ糖をミツバチのだ液に入っている酵素が分解し、
「果糖」と「ブドウ糖」という糖分に変化させる。
人間の味覚は、果糖の甘さに非常に強く反応する。
そのため、花の蜜よりもハチミツの方がより甘く感じる。
ブドウ糖も甘み成分だが、
ハチのだ液によって、一部が酸味のある物質に変わる。
そのため、ハチミツが酸味もあるフルーティーな味わいになる。
このように、ハチのだ液が花の蜜を分解するため、ハチミツは花の蜜より、はるかに甘みを感じるようになる。
ただ、このだ液による蜜の変化は、すぐには起こらず、
完全に分解されるまでには、約2〜3か月かかる。
ハチミツは、ハチが寒い冬を乗り越えるための保存食。
しかし、分解し始めのハチミツの水分量は、全体の60%ほどと多いので、そのまま保存すると、冬が来る前に腐ってしまう。
そうならないよう、ハチは羽ばたきをして、巣の中の空気を入れ替えハチミツを乾燥させる。
こうして、ハチは水分を蒸発させて、ハチミツを濃くしている。
こちらが完成したハチミツ。
これだけ水分がなく、しかも酸性になっているので、微生物が増えることもなく腐ることはない。
ちなみに、1匹のミツバチが 一生かけて採れるハチミツの量は、スプーン1杯分くらい。
私たちが 一瞬で食べてしまう量も、ミツバチが 一生かけた量。