スウェットの首元にあるV部分ってなに?という話がありました。
これについて、西洋の服飾文化を研究する朝日真 先生(文化服装学院 専任教授)が、説明していました。
スウェットの首元のV部分の正式名称は、「Vガゼット」という。
最近は、ファッションとして付いているものもあるが、実はちゃんとした理由がある。
「Vガゼット」がついている理由【1】:
首まわりの生地を長持ちさせる。
スウェットが登場したのは、20世紀初頭。
その当時のものと現代のものを比べてみると、
スウェットが誕生した当時の方が、生地が伸びないようにする「リブ」と呼ばれる部分が、長いのが分かる。
かつては、縫製技術が未熟で、着ているうちに生地が伸びてしまわないように、長くして補強していた。
しかし、首元部分は、長くすると着づらくなってしまう。
そこで、付けられたのが、伸び縮みする生地で作られた「Vガゼット」。
これにより、着やすく、スウェット生地を無理に引っ張らないため、生地が長持ちする。
「Vガゼット」がついている理由【2】:汗どめ。
そもそも、スウェットは、スポーツをする時に着るものとして作られた。
首から流れた汗は、首元を通って、スウェット全体に染み渡ってしまうが、
胸元にVガゼットがあると、縫い目で汗が染み出すのを防ぐ効果がある。
そして、現在は、縫製技術も発達し、スウェットは伸びにくく作ることができるようになった。
そのため、Vガゼットをつけなくても、生地は長持ちするようになった。
1950年代、Vガゼットは、首元のスウェット生地をV字にカットし、
その部分に伸び縮みする三角形の生地を編んではめ込んだ「はめ込み式」が主流だった。
しかし、これは生産に手間がかかり、値段が高くなってしまった。
そこで、登場したのが、我々が今よく目にする「貼り付け式」のVガゼット。
これは、スウェット生地の首元に伸び縮みしない三角形の生地を上から縫い合わせたもので、伸び縮みする役割は、ほとんどない。
なので、初めは「伸び縮みの補強」と「汗どめ」でつけられたVガゼットだったが、
縫製技術が発達して以降、主な役割は「汗どめ」になった。
Vガゼットの断面を見ると、縫い目の膨らんだ部分から外に汗が染み出ないようになっている。