おじさんのくしゃみが、うるさいのはなぜ?という話がありました。
これについて、人体の仕組みに詳しい菅本一臣 先生(大阪大学 大学院工学研究科 招へい教授)が説明していました。
そもそも、くしゃみとは、鼻の毛・粘膜についている異物を
激しい風で体外へ排出するために反射的に起こる防衛反応。
では、くしゃみはどうやって起こるのか?
鼻の毛・粘膜に刺激を感じた場合、
脳の延髄という場所にある「くしゃみ中枢」に「くしゃみを出せ!」という指令が届く。
くしゃみ中枢は、くしゃみを出すために、
「ろっ骨を広げろ!」「横隔膜を下げろ!」「肺を膨らませろ!」「のどの筋肉をしめろ!」
という指令を出し、肺の中で大きな風船をつくろうとする。
そして、「ため込んだ空気を一気に吐き出せ!」という指令が出ると、
口から、くしゃみが出る。
この指令は、くしゃみ中枢のスイッチが押されてしまえば、
約1秒ほどの速さで、この信号を伝えて、口からくしゃみが出る。
なので、くしゃみが出る事自体は、自分でコントロールできない。
では、くしゃみの大きさは何で決まるのか?
くしゃみが出る仕組みは、膨らませた風船を一気に吐き出す、というのと同じ。
つまり、体が大きい人、肺活量が多い人ほど、より大きな空気を吐き出せる。
なので、女性より男性の方が、自然とくしゃみは大きくなる傾向にある。
しかし、ここで1つ疑問がある。
年齢とともに肺活量が衰えて、くしゃみは小さくなっていかないのか?
おじさんのくしゃみが大きい謎は、最先端の「運動制御学」と深く関係している。
脳は、様々な動きに制御をかけていることが、最近の研究で分かってきた。
例えば、熱いものをさわった時の「反射」は危険を察知した時に、無意識に起こるものとされていたが、
脳が反射に制御をかけて、コントロールしていることが分かった。
熱いものを触った瞬間、神経を通って脳が「熱い」と判断する。
すると、脳が、今までの経験や状況から、「どれくらい声を出そう?」「どれくらい手を引く」など、
瞬時に制御をかけて、反応している。
若い人、特に女性は、大きい声は恥ずかしいという気持ちから、
脳がブレーキをかけて、無意識に声のボリュームを下げている。
しかし、おじさんの場合は、無意識に大きな声を出してしまう。
加齢によって恥ずかしさ・緊張感が減り、脳からの制御=ブレーキが外れる。
若い人、特に女性の場合、前頭葉が「大きなくしゃみは恥ずかしい」と考えているため、
大脳の一部から、くしゃみの大きさにブレーキをかける。
一方、おじさんは中年を過ぎると、そもそも「大きなくしゃみは恥ずかしい」と思わなくなってしまうため、
ブレーキが壊れ大きなくしゃみをしてしまう。
しかし、大きなくしゃみは悪いことではない。
むしろ我慢せずに思いっきりくしゃみをすることは、命の危険を防ぐということにもつながる。
くしゃみを我慢すると起こる命の危険とは?
くしゃみを出そうと体内に一気にため込んだ空気は、口から吐き出される瞬間に、時速320kmもの速さになっている。
これは、東北新幹線「はやぶさ」の最高速度と同じスピード。
口から出ようとする「はやぶさ」を封じてしまうと、
出る場所を封じられた「はやぶさ」は、他の出口を探して鼻や耳から出ようとするが、
最悪の場合、鼓膜の破裂につながる可能性がある。
他にも、血管の壁が弱い人は、くしゃみをこらえて血圧が上昇した際、血管が破れる危険がある。
間違った姿勢で大きなくしゃみをすると、ろっ骨を折ったり、ぎっくり腰を招く危険性もある。
こちらのような姿勢で、くしゃみをするとよい。