数え方で、「人」と「名」の違いは?という話がありました。
これについて、飯田朝子 先生(中央大学 国際経営学科 教授)が説明していました。
人間を数える時は「人」が原則、
名前が特定できる場合は「名」を使うことが多い。
野球の観客数は「人」。
ホテルの宿泊客数は「名」。
うどん屋さんの客数は「名」。
しかし、うどん屋さんに名前を教えていないのになぜ?
名前がわからなくても「名」を使う時がある、それは、相手に敬意を払う場面。
例えば、飲食店。
「いらっしゃいませ、お客様1名様ですね」
この時、「お客様、お1人様ですね」と言われたらどうでしょうか。
(1人で寂しいお客さんがいらっしゃいました)と言われている感じもする。
このように、敬意を払って接するお客さんなどに対しては、
名前がわかっていなくても「名」を使うことがある。
実は、江戸時代まで、「名」という数え方はなかった。
江戸時代の書物「管板海外新聞 別集」を見てみると、
名前が特定できているにもかかわらず、人数を表すところには「人」が使われている。
しかし、明治5年に、政府が戸籍を作ったことで、人の数え方としての「名」が誕生した。
江戸時代にも、戸籍のようなものはあったが、村ごとに管理されていて、全国民の名前は把握できていなかった。
そこで、明治5年、政府は国民一人一人の名前や住所などを把握するために、新たに「戸籍」を作成。
この戸籍によって、全国民の名前を特定できたことから、名前の「名(な)」をとった「名(めい)」という数え方が誕生したと言われている。
当時の陸軍の資料を見てみると、
確かに「人」ではなく「名」が使われている。
ちなみに、「三者面談」などで、人数を表す時に、「者(しゃ)」という言葉を使うことがあるが、
なぜ「三人面談」ではないのか?
これは、違った立場の人が集まっているから。
先生、生徒、そして保護者と、それぞれ違った立場の者が集まっているので、「者」を使っている。
他にも、野球で、ランナーが3人残った状態でチェンジする「三者残塁」という言葉があるが?
これも、それぞれのランナーは立場が違う。
三塁ランナーは、一目散にホームベースを目指す。
二塁ランナーは、確実に塁を進め、あわよくばホームベースも狙う。
一塁ランナーは、1つでも多く塁を進める。
このプレーヤーが置かれた状況で、立場が違う時に「者」を使う。
ちなみに、人魚姫やケンタウロスのような、半分人間と半分動物の生き物の数え方は?
ことばを話したり恋愛する場合は、架空のものであっても「人」と数える。