お子様ランチに旗が立っているのはなぜ?という話がありました。
これについて、近代日本の食文化の研究をしている、東四柳祥子 先生(梅花女子大学 教授)が説明していました。
お子様ランチには、エビフライやハンバーグ、スパゲッティなどの洋食が盛り付けられているイメージだが、
実は、その内容に厳密な決まりはない。
幕の内弁当のように、子どもたちの人気のおかずが、組み合わさっていれば、それはもう「お子様ランチ」。
そんな、お子様ランチは、いつ生まれたのか?
デパートの食堂などで、いわゆるお子様メニューが誕生したのは、昭和初期であると考えられる。
昭和以前の日本では、食事をする場所に、「子ども向けメニュー」という発想は、ほとんどなかった。
しかし、時代が昭和になると、「御子様ちらし」や「御子様弁当」といった子ども向けの料理が次々と誕生。
昭和5年、東京・日本橋のデパートで、お子様洋食というメニューが登場。
こちらが、その当時のメニューを再現したもの。
内容も現代と大きく変わらない。
そして、この時初めて、ごはんに旗が立った。
そして、この時と前後して、上野デパートで、「お子様ランチ」という名前の料理が誕生した。
こちらも、しっかりと、ごはんに旗が立っている。
そして、いつからか、旗が立った子ども向けのメニューが「お子様ランチ」という名称で、
世間に認識されていったものと考えられる。
では、なぜ日本橋のデパートは、ごはんに旗を立てたのか?
お子様ランチに初めて旗を立てたのは、日本橋のデパートの食堂主任を務めていた、安藤太郎さん。
実は、安藤さんは、とても山登りが好きな方で、ごはんを山に見立てて、その頂上に旗を立てた。
日本橋三越の現在のお子様洋食がこちら。
子どもが大好きなハンバーグに、スパゲッティ、カニクリームコロッケ、そして旗の立ったケチャップライスと、
まさに王道のお子様料理。
安藤さんが旗を立てたのには、子どもたちへのある思いがあった。
昭和5年、日本橋のお店で食堂主任だった安藤太郎さん、当時23歳。
「アンタロー」と呼ばれていた安藤さんは、ある日お店に届いたかわいらしいお皿を見て手にとった瞬間、
このお皿を使って、子どもたち向けの料理を作ろうと、妙案を思いついた。
サンドイッチ、スパゲッティ、コロッケ、ハム。
子どもが大好きなおかずをたくさん詰め込んだ。
そして、ケチャップライスを富士山みたく三角に盛り付けた。
しかし、この富士山には何かが足りないと、つまようじと紙で出来た小さな旗を
ケチャップライスの頂上に、突き立てた。
前年に起こった世界恐慌で、当時、不況のど真ん中、日本中暗い世の中、せめて子どもたちには、
食事だけでも、明るく夢のあるものを食べて、楽しんでほしいという優しい思いが込められた。