名前の「さいとう」にいろいろな漢字があるのはなぜ?という話がありました。
これについて、日本人の苗字に関する研究をしている 萩本勝紀 さん(家系図作成・先祖調査請負人)が説明していました。
有名人の名前にも、斎藤佑樹、齋藤飛鳥、斉藤由貴 など、様々な「さい」の漢字がある。
そもそも、戸籍に登録されている「さいとう」の「さい」の漢字の数は、59種類。
たくさんの「さい」の字があるのは、実は、字を間違えてしまったせい。
一体、どういうことなのか?
全国に、約80万人いるとされる「さいとう」。
全ての「さいとう」の原点となった漢字が、こちら。
ここで、「さいとう」誕生の歴史を見てみる。
「さいとう」の「さい」のルーツは、平安時代。
伊勢神宮の近くにあった「齋宮(さいくう)」という場所にある。
ここにいたのが、天照大神(あまてらすおおみかみ)に仕える齋王(さいおう)。
齋王とは?・・・天照大神に仕える皇族の未婚女性のこと
この齋王に仕える一番偉い役職である 齋宮頭(さいぐうのみや)を務めた人物が、さいとうの起源。
では、そもそもの「齋」の意味は?
漢字の成り立ちを見てみる。
これが、2000年以上前に、中国で書かれていた「齋」。
諸説あるが、上の部分は神様にお祈りをささげる時に身に着けていた髪飾りを、
下の部分はお供えを置く台を表す。
このことから、「齋」には、神仏を祭るときに心身を清める、という意味がある。
では、なぜ「齋」と「藤」が組み合わさったのか?
平安時代に、絶大な権力を手にした藤原氏が関係している。
国の役職を独占したおかげで、周りは「藤原」だらけに、
そんな中、初めて「さいとう」を名乗ったのが、藤原叙用(のぶもち)。
この人は、もともと、齋宮頭。
役職である齋宮頭の「齋」の字と、自身の苗字の「藤」を組み合わせることで、「齋藤」を名乗ったとされる。
ちなみに、藤原氏にルーツがある苗字には、他にも、
国の警備を行う職業「武者所(むしゃどころ)」の「藤原氏」で、「武藤」。
伊勢に住む「藤原氏」で、「伊藤」。
天皇の身辺警護を行う「内舎人(うどねり)」の「藤原氏」で、「内藤」。
などがある。
「さいとう」の「さい」の字が増えたキッカケは、明治8年に公布された「平民苗字必称義務令」。
これは、全ての国民に対して、苗字を名乗ることを義務づけた法令。
登録する仕組みは、とても簡単で、苗字を書いた紙を役所に提出するだけだったが、
当時の 一般庶民は、漢字の読み書きが苦手だった。
さらに、当時は、お互いを下の名前で呼び合うことが多かったため、苗字を適当につけた人もいた。
これは、さいとうさんも他人事ではなかった。それが誤字の大発生。
もともとの「齋」の「Y」のような部分を「了」と間違えたもの。
他にも、「示」の部分が、カタカナの「キ」のように間違えたもの。
「Y」のような部分の左右がどちらも違うもの。
このような間違いにより、たくさんの「さい」が生まれた。
さらに、いわゆる「くずし字」が書かれた苗字が、そのまま登録されてしまうケースもあった。
「一斉に」などに使われる「斉」は、もともと別の字で、「せい」と読み、「そろう」という意味があるが、
「齋」の文字と見た目が似ていたため、書くのが難しいと思った人が省略して、「斉」としたことがキッカケで、「さいとう」に使われだした。