卵の黄身についているあの白いものは何か?という話がありました。
これについて、養鶏について研究し、卵にも詳しい、信岡誠治 先生(東京農業大学 元教授)が説明していました。
この卵の黄身についている、白いやつの名前は、「カラザ」。
主な成分は、タンパク質で、卵白の一部。
カラザは、卵を割った時は白い塊だが、
実は、卵の中では、弾力のある濃厚卵白と黄身の間をねじれたひも状になって、つなぎ、黄身を両側からハンモックのようにつっている。
MRIで、断面を撮影したのがこちら。
卵の殻の上の部分だけを削り取ってみると、
確かに、カラザが黄身をつっている。
なぜ、黄身をハンモックのように、つる必要があったのか?
それは、黄身を潰さないため。
卵が転がったりした時、黄身をつなぐカラザがないと、黄身は衝撃を受け、傷ついてしまう。
カラザは、その揺れを吸収し、黄身を中央に保つことによって、傷つけないようにしている。
黄身には、「胚」というヒヨコになる部分があるが、
この胚が傷つくと、その卵はふ化しない。
そこで注目すべきなのは、カラザのねじれ。
割った卵を見てみると、黄身の上に胚がある。
このねじれにより、卵が動いても、バネのクッションのように、卵黄の揺れを抑え、
卵黄の表面にある胚が、常に上に位置するように、回転する構造になっている。
胚が常に上にあることにより、親鳥が卵を温める際に、
熱が伝わりやすくなり、
ヒヨコになる胚の成長を促す効果がある。
他にも、カラザは、黄身をウイルスや細菌から守る役割もある。
卵の殻には、「気孔」という小さな穴が1万個近くあり、
そこから卵の中に酸素を取り入れ、逆に炭酸ガスを出す、いわば呼吸を行っている。
しかし、その穴は、ウイルスや細菌の侵入口。
カラザがないと、卵が転がったりした時に、黄身が殻にくっつき、ウイルスや細菌に感染してしまうおそれがある。
そのため、カラザは黄身を中心に安定させ、細菌に感染しにくくしている。
つまり、カラザとは、ヒヨコになる部分の胚を常に卵黄の上に保ち、ウイルスや細菌に感染しないようにする、まさに命綱。
ちなみに、食べる前に取り除いている人も多い、このカラザには、驚くべき栄養素がある。
それはシアル酸で、脳を活性化し、免疫力を高める効果もある。
インフルエンザの予防にもなるといわれている。
免疫力を高めるシアル酸は、肉や魚、野菜にはほとんど含まれておらず、卵や牛乳に多い。