生魚は腐るのに干物が腐りにくいのはなぜ?という話がありました。
これについて、魚の食品加工に詳しい、平塚聖一 先生(東海大学 教授)が説明していました。
干物が腐りにくいのは、自由水が少ないから。
実は、魚などの食品の中には、2種類の水が含まれる。
食品の中には、タンパク質などの成分としっかりくっついて動かない「結合水」と、
その周りを自由に動き回る「自由水」の2種類が存在する。
魚などの食品が腐るのは、水の中で微生物が繁殖するから。
この微生物は、結合水では繁殖できない。
結合水は、タンパク質に完全にくっついているため、微生物はその水を使って生きていくことができない。
一方、自由水は、微生物にとっては大好物。
何かにくっついているわけではなく、離れているので、簡単に、その水を使って繁殖できる。
干物が腐りにくいのは、生魚より自由水がすくなるから。
例えば、魚のアジをさばいて、塩水につけることで、アジの中に塩が入っていく。
そうすると、塩の成分と自由水がくっついて、動かない結合水になる。
つまり、自由水が減る。
さらに、浸透圧も関係する。
アジの中の水分と、外の塩水では、塩水の方が濃度が濃くなる。
濃度が違う液体が隣り合わせていると、同じ濃度になろうとして、薄い方から濃い方へと水がどんどん出ていく。
塩水につけることで、中と外の塩分の濃さが同じようになるように、アジの中の水分が外に出ていく。
この時に出ていく水分は、自由水だけ。
その結果、アジの中の自由水がさらに減っていく。
つまり、塩水につけることで、アジの中はどんどん乾燥していく。
魚を干すと表面から乾燥して、自由水だけが抜けていく。
塩水につけて減ったアジの中の自由水は、干すことでさらにどんどん減っていく。
微生物が生きていくために必要な自由水がなくなる。
だから、干物にすると腐りにくい。