ゴルフボールにくぼみがあるのはなぜ?:チコちゃんに叱られる!【2023/07/21】

ゴルフボールに、くぼみがあるのはなぜ?という話がありました。


(野球やサッカーのボールにも、多少の凸凹はありますが・・・)

一体どうしてなのか?

ゴルフボールの歴史、仕組みについて詳しい 北岡哲子(元日本文理大学 特任教授)が説明していました。

ゴルフボールの表面にあるくぼみは、正式名は「ディンプル」というが、

ボールをより上へより前へ飛ばすためにつけられたもの。

ゴルフといえば、男子プロの平均飛距離は270m以上にもなる、ボールを遠くに飛ばす球技。

実は最初、この凹凸はなくてツルツルだった。

ゴルフが広まったのは、1400年代。

この頃のゴルフボールは、木のボール。

表面にくぼみは全くなくツルツルだった。

ちなみに、飛距離は約91mで、現在の3分の1。

木のボールの後には、皮のボール、ゴムのボールが誕生するが、

この時もまだ表面はツルツル。

しかし、ここで思わぬことが・・・。

実は、新しいボールより、使い古して表面に傷がついたボールの方が遠くに飛んだ。

理由はわからなかったが、とにかく、表面に傷があると、よくボールが飛んだため、

あらかじめ表面に網目状の傷を入れたボールや、ボツボツが付いたボールなどが生まれ、

1905年、イギリスのウィリアム・テーラーによって、

ついにボールに傷があると、なぜ飛ぶのかが解明された。

これによってくぼみのあるボールが誕生した。

その後、ボールの改良はさらに進み、丸と六角形のもの、大小の丸が入り交じったもの、

花火のような模様のくぼみなども登場。

飛距離も格段に伸び、現在、記録に残っている最長飛距離は、

アメリカのマイク・ドビン選手が打った約504m。

木のボールの5倍以上の飛距離。

こうして飛距離を伸ばすために生まれたくぼみ。

なぜあると飛ぶのか?

ゴルフボールをクラブで打つと、ボールは回転して飛んでいく。

そのボールには、空中で浮き上がろうとする「揚力」と、

下に引っ張られる「重力」、後ろに引き戻される「抗力」がかかる。

ゴルフで重要なのは、まず、揚力を増やすこと。

それから、後ろに戻される抗力を減らすこと。

この時に、このボールのくぼみ、ディンプルはとってもよい仕事をする。

くぼみの活躍1「ボールをより上へ」

ゴルフクラブがボールに当たるフェース面には、角度がつけられている。

これによって、ボールの下を押し出すことになり、

ボールには後ろ向きの回転、バックスピンがかかる。

すると、どうなるか?

例えば、丸めた画用紙にバックスピンをかけて飛ばすと、

高く舞い上がった。

一体、何が起こっているのか?

ボールの表面を流れる空気の様子を見てみると、

上側は「ボールの回転」と「空気の流れ」が同じ方向のため、流れはより速くなる。

一方、下側は「ボールの回転」と「空気の流れ」が逆向きのため、流れが遅くなる。

この時、ボールの表面にくぼみがあると、空気が引っかかりやすくなり、

上と下の速度差は、さらに大きくなる。

ボールの上と下で速度差があると、気圧の差も生まれる。

空気の流れが速い方が気圧が低くて、遅い方が気圧が高くなる。

高い方から低い方へ力が働くので、ボールを上へ押し上げる力(揚力)が生まれる。

くぼみの活躍2「後ろに引っ張る力を減らす」

飛んでいるボールに働く「後ろに引っ張る力」とは、一体どういうものなのか?

こちらは、ボールに煙を当て、周りに起きる空気の流れを再現した映像。

空気の流れがボールの進行方向から来るが、たくさんの渦が発生しているのが、たくさんあると、後ろに引っ張られてしまう。

ポイントは、この渦が発生する幅。

くぼみがないボールと、あるボールの空気の流れを見てみると、

ボールの後ろ側に、渦が発生する幅が違うことが分かる。

これは、一体なぜなのか?

表面に、くぼみのないボールの場合、正面から当たった空気は、ボールの頂点付近から、そのまま後ろに流れていく。

これが、くぼみがあるボールだと、くぼみの部分で乱気流が生まれ、空気の流れが乱れる。

すると、空気がまとわりついて、ボールから離れていくのが遅くなる。

これにより、くぼみがあるボールは、ないボールよりも渦が発生する幅を小さくすることができ、後ろに引っ張る力を弱められる。

このように、ボールのくぼみによって、より上にあげる力は大きく、後ろに引っ張る力は弱くなるため、より上へより前へ飛ぶことができる。