大型船の下が赤いのはなぜ?:チコちゃんに叱られる!【2023/08/25】

大型船の下が赤いのはなぜ?という話がありました。


これについて、船と海洋環境の研究をしている、岡村秀雄 先生が説明していました。

タンカーや貨物船などの大型船の場合、水に沈む下の方だけ、赤く塗られているが、

これは、デザインのために、赤くしているのではなく、船の底に海洋生物がくっつくのを防ぐ目的がある。

船にとって、天敵ともいえるのが、海藻や貝、フジツボなどの「海洋生物」。

これらの生物が、船の底にくっついてしまうのは、船にとって死活問題。

というのも、船の底に海洋生物が付くと、水の抵抗が増し、スピードが遅くなる。

その状況で、同じスピードを出そうと思うと、場合によっては、80%以上燃費が悪くなることもある。

そのため、生物がくっつかないように対策する必要がある。

人間と海洋生物の戦いの歴史は古く、古代ローマや古代ギリシア時代には、船の底を鉛で覆うなど、海洋生物が付かないように対策していたという。

そして、現在、海洋生物への対策として、最も一般的なのが、「亜酸化銅」という赤い物質。

亜酸化銅とは、銅が化学変化した赤い物質で、実は多くの大型船の赤い部分には、この亜酸化銅を含んだ塗料が塗られている。

船が海にいる間、この塗料の表面は、わずかに海水に溶けていく。

その時に、亜酸化銅から、「銅イオン」が一緒に海水にしみ出ていく。

この銅イオンを、特にフジツボなどの海洋生物が嫌い、船に寄り付かなくなる。

実際に、酸化銅を含む塗料を塗った鉄板と塗らなかった鉄板を同じ期間海に入れておくと、1か月半後には、このありさま。

亜酸化銅によって、海洋生物がくっつくのを防げていることが分かる。

つまり、大型船に海洋生物が嫌う亜酸化銅を含む赤い塗料を塗ることで、海洋生物がくっつくのを防ぎ、速く走れる。

単純に生物がくっつくことを防ぐという意味で言えば、亜酸化銅より効果が高い物質も存在するが、

そういった成分は、海洋汚染などの観点から、国際条約によって使用が禁止されていたりする。

海の環境を守るため、国際連合の専門機関が定めたこの基準でも、亜酸化銅の使用は認められている。

生物への防御効果や、環境への影響、コスト面などを考え、赤い亜酸化銅がベストな物質だった。

ちなみに・・・、

・船に塗った塗料は、水に溶けていく(1年で約0.1mmの厚さ)ので、定期的に塗料を塗り直すというメンテナンスが欠かせない。
・海洋生物を近づけさせない塗料は、赤い以外の色もある。