海の水はしょっぱいのに、魚はしょっぱくないのはなぜ?という話がありました。
これについて、魚の生態に詳しい、秋山信彦 先生(東海大学 海洋学部 水産学科 教授)が説明していました。
海の魚は、海水をガブ飲みしないと生きていけない。
しかし、そうすると、体の中の塩分が濃くなってしまうので、エラから塩分だけ大量に捨てて、調節をしている。
海水の塩分が約3.4%、お味噌汁が0.8%なので、かなりしょっぱいことがわかる。
海水魚・淡水魚ともに、魚の体液の塩分は、約0.9%で、少し塩気があるが、身の部分は0.9%以下なので、
人間の舌では、しょっぱいと感じない。
では、塩分は3.4%の海水の中で、魚は、どうやって0.9%を保っているのか?
それは、「浸透圧」という圧力が、関係している。
濃い液体と薄い液体があると、細胞の膜を通じて、これが常に同じ濃度になろうと、
濃い方を薄めようとして、薄い方から水だけが移動する。
これが「浸透圧」。
例えば、きゅうりを塩水に漬けて漬物を作る場合、
塩分が薄い、きゅうりから、塩分が濃い塩水の方に水が移動するので、
きゅうりの水分が抜けて、みずみずしかったきゅうりがしんなりする。
これと同じことが、海水の魚にも起こる。
塩分が薄い体内から、塩分が濃い海水の方へ水分が出ている。
そのため、体の水分が減らないように、海水を大量にガブ飲みする。
しかし、しょっぱい海水をガブ飲みすると、今度は体内の塩分が濃くなってしまう。
実は、魚のエラの部分には、「塩類細胞」があって、そこから血液中の塩分を捨てる。
そのため、魚は海水をガブ飲みしても、体はしょっぱくならない。
人間と同じで魚もおしっこから塩分を捨てている。
海水魚のカワハギのおしっこの塩分濃度を測定してみると、約0.285%だった。
一方、淡水魚の場合、川や池の水の塩分はほぼ0%で、魚の体内は0.9%。
今度は、塩分が薄い水が、塩分が濃い体内に入ってくる。
体液の塩分が薄くならないよう、淡水魚は水をガブ飲みせず、大量のおしっこで水分を捨てる。
そして、エラの塩類細胞から水の中にある僅かな塩分を取り込むことで、体内の塩分を約0.9%に保つ。
淡水魚のニジマスのおしっこの塩分濃度を測定してみると、約0.125%だった。
海水魚と比べて塩分が薄め。
海水魚と淡水魚は、全く逆のことをしているが、どちらも、エラやおしっこで体内の塩分を調節している。
ちなみに・・・、
・エラの塩類細胞は塩分をためる機能はないので、食べてもしょっぱくない。
・川で生まれて海に行き川に戻るサケは、成長にともない体の機能が淡水魚→海水魚→淡水魚と変化する。