時間が経つと紙が黄ばむのはなぜ?という話がありました。
これについて、紙の作り方に詳しい三井健一さん(製紙メーカー)が説明していました。
こちらは、作られてから10年経って黄ばんだ本。
このように、本のこの部分が黄ばむのは、この本に使われている紙が、木をすりつぶして作られているから。
木をすりつぶす過程で短い糸のようなものになる。
これに水を加えて特殊な薬品で色を抜いたのが、「パルプ」と呼ばれる紙の原料。
このパルプから一枚の紙になる。
これを「機械パルプ」と呼ぶ。
この木に含まれる「リグニン」という成分が、紙が黄ばむ原因。
木は、3つの成分で、できている。
リグニンが25%、セルロースが50%、ヘミセルロースが25%。
リグニンには、太陽光や蛍光灯や、酸素に触れると、色が薄い茶色に変わる性質がある。
そのため、リグニンを含んだ紙は、時間が経つと黄ばんでいく。
しかし、ここで一つ疑問がある。
古い本を見ていると、濃く黄ばんでいる物もあれば、古い図鑑のように黄ばんでいないものもある。
これは、どうしてなのか?
時間が経っても黄ばんでいないのは、化学薬品を使ってリグニンを取り除いているから。
木と薬品を混ぜて、高い温度で煮て作るパルプを「化学パルプ」と呼ぶ。
木を煮ることでリグニンは薬品に溶けていくため、リグニンがほとんどない状態のパルプが出来上がる。
黄ばみにくい化学パルプから作られる紙は「上質紙」と呼ばれ、一般的に図鑑やノート、コピー用紙などに使われる。
このように、紙の原料となるパルプは、大きく分けて2種類で「機械パルプ」と「化学パルプ」がある。
機械パルプの割合が多ければ多いほど、黄ばみやすい紙ということになる。
しかし、ここでもう一つ疑問がある。
紙を全部、黄ばみにくい化学パルプにすればよいのではないか?
機械パルプを使った紙は、軽い・透けにくい、といったメリットがあり、
ざらっとした触り心地やめくりやすさは、各出版社がこだわってオリジナルは配合をしている。
例えば、漫画や雑誌がコピー用紙で作られていたら、面白みに欠けるかもしれない。
他にも機械パルプの方が化学パルプよりもボリューム感が出るというメリットがある。