なぜ「鍵閉めたっけ?」となるのか?という話がありました。
これについて、脳の仕組みに詳しい 澤田誠 先生(名古屋大学 教授)が説明していました。
人間の脳というのは、記憶できる量に限りがあって、一説には約17.5TBといわれている。
テレビ録画の容量に例えるなら、約半年分。
この脳の容量は、日常の出来事を全て記憶していると、
あっという間に、いっぱいになってしまう。
そこで、記憶しなくていいものは、記憶しないように、省エネ化をしている。
では、人は普段、どんなことを「記憶しなくてもいい」と判断しているのか?
脳が記憶するものの特徴として、「感情が動くかどうか」が大きく関係している。
脳の中には、大脳辺縁系といって、感情や本能をつかさどる部位が存在する。
例えば、目の前にヘビが現れた時、恐怖や嫌悪感を生み出したり、
サッカーでゴールを決めて、「うれしい!」という気持ちや幸福感を生み出したりしている。
このように、感情が動いて大脳辺縁系が反応すると、記憶に残りやすいとされている。
感情が動くことは、脳が、人が生きていくために必要だと判断して、記憶に残す。
例えば、怖い思いや嫌悪感は、自分の身を守るため。
喜びや達成感は、人間の生存本能として、生きるために必要な記憶だと、脳が判断する。
しかし、「鍵を閉める」という行為は、生活の中でルーティンワーク化されている。
感情が動くことは、ほぼない。
つまり、「鍵を閉める」という感情が動かない習慣は、脳が記憶できる容量を超えないよう、
あえて、記憶に残さないようにしている。
感情が動かない以外にも、記憶に残りづらい特徴がある。
それは、「注意が向かない」ということ。
鍵を閉めて家を出ようとする時、
「電車の時間に間に合うかな?」「雨が降るのかな?」など、
別のことに注意が向いてしまうことがある。
自分にとって、より大事だと判断した情報のみを記憶し、
「鍵を閉める」という行為を記憶に残す必要がないと、判断してしまう。
「短期記憶」や「長期記憶」などという言葉があるが、
「鍵を閉める」という行為は、そもそも短期記憶にすら残っていない。
だから、思い出そうとしても思い出せない。