洗濯物が乾くのはなぜ?:チコちゃんに叱られる!【2024/02/09】

洗濯物が乾くのはなぜ?という話がありました。

これについて、金沢工業大学で物理化学を研究している 草野英二 先生(バイオ・化学部 応用化学科 教授)が説明していました。

太陽光や風の影響で洗濯物が乾くと思いがちだが、洗濯物から水分がなくなる理由には、すごい仕組みがある。

そもそも、湿っている洗濯物の中にあるのは、水。

洗濯物が乾くのは、まず水の分子が洗濯物の表面から気体になって出ていく「蒸発」が起こるから。

(しかし、水は、沸騰して100℃にならないと気体にならないのでは?)

実は、水の蒸発は低い温度でも起こっている。

水は、沸騰すると、水蒸気となって気体に変化する。

沸騰の場合、水分子は、液体の内部からも、どんどん水蒸気になる。

一方、低い温度で起こる蒸発の場合は、水面にある水分子だけが空気中に出てくる。

水たまりが夜中に乾いて無くなったり、コップを置いておくと水が減る、

この蒸発が起こっているから。

(しかし、一体なぜ、水分子は低い温度でも、空気中に出ていくのか?)

水分子は、水の中で動き回っている。

中には、元気な水分子がいて、この元気な水分子が空気中に出ていっているから。

だから、洗濯物の水は低い温度でも蒸発していき、洗濯物が乾く。

しかし、蒸発と同時に、「凝縮」という現象も、洗濯物の表面で起こっている。

凝縮とは、空気中の水蒸気が液体になる現象。

例えば、夏に、冷たい飲料ボトルの表面に水滴がつく。

あれと同じように、空気中の水分が、水になり、洗濯物に戻るということが同時に起きている。

つまり、洗濯物の表面では、水分子は、気体になったり、液体になったりと、

常に、出たり入ったりしている。

洗濯物の表面では、水の出る量と入る量は釣り合おうとする作用が働く。

この釣り合いが崩れないと、洗濯物は乾かない。

(では、どうやって洗濯物は乾くのか?)

実際に洗濯物を干すと、「拡散」という現象が起こる。

これが、洗濯物が乾く秘密。

洗濯物の表面の空間は、水分子が混んでいる状態。

一方、洗濯物から離れた空間では、水分子が少ない状態。

すると、水分子は混んでいる所よりも、空(す)いている方に移動する性質があるので、どんどん、洗濯物から離れてく。

(例えば、電車で満員の車両から空いている車両に移動するようなイメージ)

空いている方が、居心地がいい。

そして、この水分子の拡散する現象は、「エントロピーの法則」により起こる。

エントロピーとは、簡単に言うと「乱雑さ」のこと。
この世の出来事のすべては、放っておくと乱雑さが増えていく。
そして、それは決して自然に元に戻ることはない。

例えば、芳香剤を室内に置くと、匂いは乱雑に広がっていき、二度と芳香剤の入れ物には戻らない、ということ。

実は、この乱雑に広がる理由は、あらゆるものには、常に均一になろうとする働きがあるためで、

この場合、芳香剤から出た匂いは、放っておいても周りの空間に、どんどん広がっていき、とても薄くなり、そして均一となる。

洗濯物の場合は、洗濯物表面近くの空間では、水分子の量が多い、つまり、湿度が高い状態となっている。

そこで、拡散が起こり、洗濯物表面での水の出入りの釣り合いが崩れて、水がどんどん出ていくので、洗濯物が乾く。

このように、拡散によって水分子が衣類から離れ、空いている空間に移動することで、洗濯物は乾いていた。

一方、周りの空間の湿度が高いと、水蒸気の拡散が起きにくいので、洗濯物が乾きにくくなる。

湿度が高い日や、湿気がある部屋では、洗濯物が乾きにくいのは、このため。

(では、洗濯物が乾くのには、風や温度は、関係ない?)

いえ、関係はある。

温度が高いと、水分子の動き方が激しくなる。

さらに温度が高いと、空間中に多くの水分子を含むことができるので、拡散も激しくなり、洗濯物が早く乾く。

次に、風だが、乾いた風が吹くと、

洗濯物の周りにある湿った空気、つまり水分子を多く含む空気が、風とともに移動していく。

すると、水分子にとって、居心地のよい空間ができるので、洗濯物の表面にある水分子は、どんどん蒸発し、洗濯物は乾いていく。

こういった理由から、早く洗濯物を乾かすには、

暖かくて、湿度が低い、カラッと晴れた日に、適度な風が吹いている状態が、一番。