なぜ落ちた髪の毛は「汚いもの」に見えるのか?という話がありました。
キレイに手入れをしている髪の毛でも、床に落ちたとたん、なぜか「汚いもの」に見える。
これは、なぜだろうか?
これについて、浮ヶ谷幸代 先生(相模女子大学 名誉教授)が説明していました。
落ちた髪の毛が「汚いもの」に見えるのは、あるべき所にないから。
髪の毛があるべき所は、頭。
自分の体から離れたとたん、微妙な存在になる。
自分のものなのか、それとも、自分のものではないのか、あいまいで、どっちつかずの微妙な存在。
頭の中で、うまく仕分けることのできない「微妙な存在」は、人を不安にさせる。
人間は、あるべき所にあるべき物があると、「いつも通りである」と安心する。
つまり、「日常をおびやかすものではない」と判断している。
髪の毛が、あるべき頭にある時は安心。
しかし、床に落ちた途端、微妙な存在になって、不安を感じてしまう。
更に、人間は、あるべき所に、ない物を見ると、異変を感じ、
「日常を壊すかもしれない」と、認識するので、ソワソワして落ち着かない不安な状態になる。
その結果、「汚い」「気持ち悪い」「居心地が悪い」などと、ネガティブに感じ、
無意識に遠ざけようとする。
それは、体の別の部分でも同じことが起きる。
爪も指先にあるうちは、何も思わないが、切り落とされて落ちていると、「汚いもの」に見える。
自分のだ液も、口から吐かれた途端、普通は「汚いもの」や「気持ち悪いもの」と感じる。
このように、あるべき所にない微妙な存在に、私たちは不安を感じるため、
「汚いもの」「気持ち悪いもの」に見えてしまう。