横断歩道を渡るときに鳥の声が聞こえるのはなぜ?という話がありました。
これについて、現在の音の出る信号機の開発に携わった、田内雅規 先生(岡山県立大学 名誉教授)が説明していました。
音の出る音響信号機は、視覚障害者の方々のためのものだが、3つの役割がある。
【役割1】青信号を知らせる
【役割2】渡る地点を知らせる
【役割3】到着地点を正確に知らせる
それを知らせる音には、「メロディー式」と「擬音式」の2種類がある。
最初に作られたのが、メロディー式。
現在でも残っているのが、「♪通りゃんせ」「♪故郷の空」の2種類。
そして、擬音式は、鳥の鳴き声。
「ピヨピヨ」というヒヨコの声と、「カッコー」というカッコウの声が使われている。
音響号機には、なぜ「メロディー式」と「擬音式」の2種類があるのか?
先に、メロディー式の信号機が開発。
愛知県警から地元の電機メーカーに「親しみやすい小鳥の声が流れる信号機を開発してほしい」という要望があった。
そして、「ピヨピヨ」の信号機が誕生した。
しかしここで、問題が発生。
四差路の交差点では、8か所でピヨピヨ鳴るので、混乱するということで、
東西と南北で、位置関係をわかりやするために、もう一種類の音が必要だということになり、
どの鳥がいいか悩んだ末、初夏に日本に南から北に渡ってくる「カッコウ」に決定。
しかし、全国で基本的に使われているのは、南北がヒヨコで、東西がカッコウなので、飛ぶ方向が逆になっている。
こうして生まれた擬音式の音響信号機だが、更に問題があった。
交差点の横断歩道の渡り口は、縁石の部分が丸くカーブしている。
そのカーブ部分を進む方向の手がかりとして使うと、
交差点の中央に向かって斜めに歩きだしてしまう。
到着地点の音に向かっていけば大丈夫じゃないかと思われるが、
当時の音響信号機は、両側(渡る地点・到着地点)で、同じ音を同じタイミングで鳴らしていたので、
こちら側の音が、向こう側の音を打ち消してしまい、向かうべき方向が、ほとんどわからなかった。
そこで生み出されたのが、「同種鳴き交わし方式」というシステム。
渡る地点と到着地点で同じ音を交互に鳴らし、音が打ち消されないようにすることで、進む方向をわかりやすくしたシステム。
しかし、ここでも問題が発生した。
横断歩道を歩いていくと、だんだんと、後ろの音が小さく、前が大きくなるので、
音を流すタイミングが交互であっても、真ん中で、前後の音量が同じになり、方向を見失い、どっちに進めばいいか迷ってしまうという問題があった。
そこで、音の種類を増やして、進む方向を判別してもらうのがいいのではないかということで、
考えたのが「異種鳴き交わし方式」というシステム。
例えば、渡る地点が「♪ピヨピヨ」なら、横断歩道の向こう側の到着地点の音は「♪ピヨ」。
というように、流す音の種類を変え、その音を交互に鳴らすというシステム。
このように、音の種類を増やしたことにより、東西南北、それぞれが分かり、渡る方向が見つけやすくなった。
メロディー式は、連続した音であるため、交互に鳴らしたり音の種類を増やすと、
騒音のもとになってしまうため、「異種鳴き交わし方式」はできない。
その結果、2003年に新規設置を取りやめ、
今では、日本国内のおよそ99%が、擬音式の「異種鳴き交わし方式」のものになった。