なぜ、絶えず息をするのか?という話がありました。
私たちは常に、息を吸って吐いてを繰り返している。
しかし、酸素が必要なら、体の中に酸素を蓄えておけばよさそうだが、
なぜ、そのように進化しなかったのか?
これについて、呼吸のメカニズムに詳しい、根来秀行 先生(医師・医学博士)が説明していました。
寝ている時も、歩いている時も、吸ったり吐いたり、常に息をしている。
1時間に約900回、1日に約2万1,600回も息をしている。
1回当たりの息の量は約500mlで、ペットボトル1本分。
つまり、1時間だと900本。1日だと2万1,600本分にもなる。
何のために息をしているのか?
試しに息を止めてみると、苦しくなる。
これは、酸素と二酸化炭素のバランスが崩れて起こる。
息を止めると、二酸化炭索が体内に増えていく。
すると脳が酸素を取り入れて、元のバランスに戻そうとして、
「苦しさ」として信号を全身の細胞に送る。
人は息を吸うことで、大気中の酸素を肺に取り入れ、
血管を通して、全身の細胞へ届けている。
その時、一緒に運ばれる食べ物などの栄養素と結び付き、
心臓を動かしたり、体温を上げたり、物を考えたり、
生きるためのエネルギーが作られる。
しかし、エネルギーを作る中で、たくさんの二酸化炭素も発生。
息を吐くことで、多すぎる二酸化炭素を体の外に出している。
では、なぜ人類は、大きな肺を作って酸素をため込み、
こんなに絶えず息をしなくてもいいように、進化しなかったのか?
それは、酸素は毒でもあるから。
エネルギーを作る過程で、一部の酸素は、体内で「酸化」という現象を起こす。
酸素に触れて起きる「酸化」。
例えば、金属の表面に現れるサビも酸化の一つ。
酸素はモノの見た目や形を壊し、変化させてしまう性質があり、
このようなことが、人間の体の中でも起きる。
これは、昔の地球の大気状態が大きく関わっている。
実は、35億年前まで地球の大気には、そもそも酸素が存在していなかった。
そんな地球で、最初の生命が誕生。
それらの生き物は、酸素を必要としない生き物だった。
しかし、その後、光合成によって、酸素を作る生物が誕生したことで、
酸素が大気中に増え、酸素に対応できない細胞生物の多くは、死滅していったと考えられている。
そして、酸素を積極的に有効活用した生物の多くが繁栄していった。
我々人間の祖先もその一つ。
つまり、当初生物にとって酸素は猛毒。
実際、人間のDNAも、酸素によって破壊されてしまうということがわかっている。
このように、酸素は毒でもあるので、多くの生物は体内に酸素をためておけず、
絶えず息をするように進化した。