世界最速自転車プロジェクト 日本とオランダの対決:超絶 凄(すご)ワザ!【2016/05/07】

日本で、自転車の最速を目指すプロジェクトが始まったそうです。

ワールドヒューマンパワードスピードチャレンジ

ワールドヒューマン パワードスピードチャレンジ
アメリカで行われる人力での世界最高速度を競う国際大会

弾丸のような人の力を極限までスピードに変える技術が詰まったもの。
現在の世界最高記録は、時速139.45km

最先端の技術を競うこの大会。
実はモノ作り大国の日本からはまだ参加していません。

初出場を目指す日本チームに胸を貸してくれたのが、世界大会で5度3位入賞のオランダチーム。

彼らを迎え、腕試しの一騎打ちの勝負。開発期間はわずか4か月の日本チームは世界に通用するのか?

世界大会で使われるこの車体、ベースとなる「自転車」と外側を覆う「カウル」からできている。

自転車は寝そべりながら乗る「リカンベント」と呼ばれるもの。
風を受けにくく、スピードが出しやすいのが特徴。

これを覆うカウルは空気抵抗を極限まで減らすよう精密に設計されたもの。

最速自転車は、最先端の流体力学や機械工学など、技術の結晶なのだ。

3人の日本人スペシャリスト

今回、自転車、カウル、ライダーを担当するのはいずれも各業界では有名な 3人のスペシャリスト。

【自転車 担当】池上 敦哉(49)
オートバイ設計のプロ、ソーラーカーの世界大会では、2009年・2011年優勝

【カウル 担当】関 比古 (28)
東レ・カーボンマジックの副社長である空力のスペシャリスト 奥 明栄(59) が若手の創造性に任せる

【ライダー 担当】小森 亮平(27)
全日本自転車競技選手権大会、U23・個人ロードレース優勝

自転車大国オランダ

日本に対するのは、人口より自転車が多いという自転車大国「オランダ」。
世界トップレベルのチーム「シグナス」。
これまでアメリカの世界大会に6回参加、そのうち5度3位の入賞を果たしている。
自己ベストは、時速125.9km

空気抵抗

日本の開発者たちは、まずは、目標の速さを、直線で、時速130kmに設定。

世界最速の自転車の空気抵抗をを見てみると、空力を重視するF1の車体をはるかに下回っている。
見たこともない数値だ。

自転車開発

海外チームの自転車は、市販のリカンベントよりもお尻の位置が低い。
このことが自転車を劇的に小さくし、空気抵抗を減らしていた。

しかし、設計を始めてすぐに難題にぶつかった。
池上が目指す小さな車体では、小森の太い足がギアにぶつかりやすいことがわかった。

ギアの位置を変えるためには、「フォーク」と呼ばれる部品の角度を立てなければならない。

すると、今度はわずかに角度を立てた方の自転車の安定性が悪くなりぐらついてしまうのだった。

今回の対決は、屋外で行われるため風の影響を受けやすく、安定性の悪さは致命傷となる。

膝が当たらず、安定するフォークの角度はどこなのか?
開発期間は、残り1か月なので自転車を作れるのは1度だけ。

池上は考えぬいた末、フォークの角度を従来のものよりも5度立てること決断していた。
これでギリギリ足が当たらず、自転車もふらつかないという。

完成した自転車でテストする。膝はギアをわずかにかわせている。ふらつきもなくスムーズに走れている。
小森が事前に市販車で走った時の時速は46.5km、池上が開発した車体の時速はなんと52.9km、時速6.4kmも速くなった。

カウルの開発

次にカウルの開発に入る。自転車のカウル設計で残された時間はたったの2週間。

世界大会で使われるカウルは大きさも形も全て違う。
それぞれの設計者がライダーの体格などを考え、最も空気抵抗が小さいと思う車体を作りだしている。

一般的に空気抵抗が少ないと言われている形の場合、最も幅の大きい箇所が前の方にあり、それは身体で一番幅のある肩の幅の箇所より大きい。
しかし、開発者の関は、最も幅のある部分を肩の幅ギリギリにした。これによって幅は17mmスリムになる。この差が大きいという。
ライダーの小森が走った時のシュミレーションをしてみると、時速126.5kmと出た。

さらに速くするため、元のデザインより、よりスリムにする形を描いたところ、逆に空気抵抗の値は上がり悪くなってしまった。
このままでは目標の時速130kmに届かない。

図の黒い線は空気の流れを表している、関が注目したのが後ろの方の部分。
本来ここの空気は車体に添って横に流れるのが望ましい、しかし下に落ちてきている。
これが原因で大きな渦が発生、空気の流れを乱し、空気抵抗を大きくしていた。

そこで、車体の下にくぼみを作った。くぼみ添って上に空気が押し上げられ、空気を横に戻すことに。
結果、渦の発生が大幅に抑えられ、空気抵抗が減った。
再度、シミュレーションをしてみると、時速132kmの数値が出た。目標の時速130kmを超えた。

ギリギリ開発が間に合った。すぐさま製作に入る。
選んだ素材は炭素繊維。重さはアルミ以下、しかし強度は鉄以上という。

これを編んだシートを型に合わせ、手作業で貼っていく。

シートの厚さはわずか0.2mm、これを破らないように、シワがないように丁寧に貼っていく。

そして、大型の釜に入れ、120度前後の温度で固める。4日間かけついに完成!

テスト走行

オランダとの対決10日前、池上が作った自転車と合体し、初めての実装テスト。

実際に乗ったライダーの小森は「めっちゃ速い」と絶賛していた。

オランダとの対決本番

アメリカの世界大会は8kmの直線道路で行われ、最後の200mのスピードを競う。

今回のコースは、1周5.5kmの楕円形、およそ6キロの助走区間を経て、計測区間に入る。
(直線ではなく、楕円形なので、オランダの人が言うには、少なくとも時速20kmはスピードが落ちるという。)

ルール
・ラスト200mの平均速度を測定
・走行は各チーム2回
・スタートは押してサポート可能

白い車体のオランダの走行

黒い車体の日本の走行

結果、1本目は、日本チームが時速92.00km、オランダチームが時速93.38kmで、オランダの方が速かった。

しかし、2本目でオランダ側にアクシデント発生!
なんと、スタート時に転倒してしまったのだ。

カウルに大きい傷が付き、空気抵抗の悪化は避けられず、オランダの2本目は、時速90.94kmとなってしまった。

そして、日本の2本目は、時速93.69kmの最高記録!。一本目のオランダチームの最速タイムを抜き勝負に勝ちました。
ライダーの小森が言うには、2本目のスパート開始位置を1本目の位置より手前に持ってくることで、さらにギアを1枚上にあげることができたのだということ。

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