A5ランク和牛肉の霜降り離れ:所さん!大変ですよ【2017/04/13】

A5ランクの霜降り離れ

日本人が牛肉を食べるようになったのは明治時代。文明開化の象徴として牛鍋やすき焼きが広がったのがキッカケだった。

その際、煮込んでも固くならない脂の多い霜降り肉が人気だった。

以来、日本ではおいしいお肉といえば「霜降り肉」というイメージが広がったという。

ところが、ここ数年、牛肉の新しい食べ方が次々と広まり、好みも多様化。

健康志向も高まり、脂の多い霜降り肉が以前のようには求められなくなった。

ここである疑問が出てくる。

ならば、「もうA5の牛を育てる必要はないのではないか?」ということ。

A5ランク以外は赤字

生産者の間でも霜降り離れは話題にはなっているが、A5ランクの和牛を育てるしかないという。

↓こちらは、ある肉牛農家の生後8か月になる子牛。

肉牛を育てる農家は、子牛を専門の生産者から購入するのが一般的。

この肉牛農家では、

子牛を平均90万円で仕入れ、その後、エサや飼育方法にこだわり、20か月ほどかけて脂肪を増やしてA5を目指すのだという。

ちなみに、5年前の子牛の仕入れ価格は平均40万円だったのが高騰してきているという。

飼育費用は以下の通り。

仕入れ価格 90万円
飼料代 30万円
他 治療費など 10万円
合計 130万円

例えば、この牛を市場に卸す時、

格付けがA5ランクなら、単価が1kg2740円で、約151万円
つまり、育成費用を差し引くと利益は21万円となる。

これが、
格付けがA4ランクなら、単価が1kg2226円で、約127万円
つまり、ほぼ収支ゼロとなる。

さらに、
格付けがA3ランクなら、単価が1kg1955円で、約107万円
つまり、赤字となる。

そのため、現在の格付けの中では、A5ランクの和牛を作り続けるしかないということ。

↓こちらは、ランク付けの参考価格。

牛肉の格付け規準

農林水産省が承認した牛肉の格付け規準「牛枝肉取引規格の概要」を見てみると、格付けは4つの項目で判定されている。

肉の色
肉の締まり具合
脂肪の色
脂肪の量

格付規準の中に、味の項目はなく見た目だけで判定されている。

さらに、脂肪の量だけが12段階もの規準に分かれている。

牛肉の格付けが現在のようになったのは1988年。アメリカとの牛肉輸入自由化交渉の真っ只中。
安いアメリカ産の牛肉が日本に輸入されれば、日本の生産者は立ち行かなくなる。
その時に注目されたのが、和牛の特徴である霜降りだった。
この輸入牛肉と比べての差別化のために今の規準となっている。

格付けが始まってから、全国でブランド牛が増加。その数は現在少なくとも280以上にのぼる。
それと共に、A5に格付けされた頭数も増加。20年で2倍近くに増えた

A5が身近にあればあるほど、消費者の霜降り離れが増える。かつて和牛を救った格付けの皮肉ともいえる現実です。