野球で呼ばれる「エース」ってなに?という疑問がありました。
そのカギは、「エイサ」と呼ばれた「アサヘル・ブレイナード」という人物に関係がありました。
彼は、約150年前に創立されたアメリカ初のプロ野球チーム「シンシナティ・レッドストッキングス」で、ピッチャーとして活躍した選手です。
「エイサ」とは、そんなアサヘルが子どもの頃から呼ばれていたニックネームで、名前の頭3文字をとったもの。
アサヘル(Asahel)→ エイサ
1860年代当時の野球のルールは、現在とは大きく違っていました。
当時の野球で重要だったのは、「バッターに打たせる」こと。
そのため、ピッチャーは打ちやすいように、「下手投げ」。
球速も50km/h前後だったと言われています。
とにかくただ打つことを楽しむ遊び、それが「野球」だったのです。
しかし、エイサはそれまでの野球の慣例を破り、約98km/hともいわれた剛速球と、プロ野球史上初ともいわれる変化球のカーブを使い、バッターに打たせないピッチングをしたのです。
そもそも野球は、富裕層のためのレクリエーションとして始めたものでした。
ですから、そこに勝ち負けに対するこだわりはありませんでした。
しかし、エイサはプロとして、勝ちにこだわるピッチングへ変えていったと考えられます。
遊びだった野球を真剣勝負のスポーツ競技に変えたのがエイサだったのです。
エイサの勝ちにこだわったピッチングで、チームは負け無し。
1869年のレッドストッキングスの年間成績は、全57試合中56勝0敗1分で優勝。
エイサは、いちやく大スターになり、さらに親しみを込めて「エース」と呼ばれるようになりました。
やがて、1870年代以降、次々に勝利を収めるピッチャーを「エース」と呼ぶようになったのです。
「The Dickson Baseball Dictionary」の本にも、
(エイサ・ブレイナード投手が57試合中56勝を収めた出来事以来、次々と勝利を収めた投手をエイサ、転じてエースと呼ぶようになった。)
と書かれていました。