別れる時に「さようなら」って言うのはなぜ?という疑問がありました。
これを、鎌倉女子大学の竹内整一 先生がわかりやすく説明していました。
日本語の別れ言葉「さようなら」は、世界でも非常に珍しい言葉遣いだといいます。
先生によると、世界の別れ言葉は、大きく分けて3つに分けられる。
英語で例えると、
・Good bye → God be with you【直訳:神があなたとともに】 の短縮形で、
しばらく会えなくなる場面で使い、「神に相手の無事を願う」別れ言葉
・See you later 【直訳:また会いましょう】
「再会を願う」別れ言葉
・Farewell【直訳:うまくやっていってください】
「相手の健康を気遣う」別れ言葉
このように、英語以外でもこの3つの意味に当てはまる別れ言葉が多いのですが、
日本語の「さようなら」は、どれにも属さない、独自の別れ言葉だというのです。
それは、なぜでしょうか?
もともと、「さようなら」という意味が、「さようであるならば」という意味の「さらば」「さようならば」という接続詞。
例えば、平安時代の竹取物語には、
確かに、ここでの「さらば」は、前を受けて後ろの文章につなげるための純粋な接続詞です。
しかし、この接続詞が、別れを含んだシーンでも多く使われていました。
同じ平安時代の源氏物語には、

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ここでの接続詞「さらば」は、別れを意味する文章の前で使われています。
このようにして、「さらば」= 「別れ」というイメージができあがっていったといいます。
【接続詞】さようならば、【別れの文章】きょうでお別れです。
別れの意味を含む文章が省略され、あとに続く言葉もなくなり、「ば」も省略され、「さようなら」になったというのです。
日本人は別れを、いったん立ち止まり確認して次のことに進む節目と考えていたので、「さようなら」という接続詞がいろんな意味を含む別れ言葉になった。
つまり、「別れる今まではこうだったから、そうであるならば、この先はこうしよう」という意味を含めて、「さようなら」を使います。
「さようなら」の意味は場面によって変わります。
・小学校の校長先生が子どもたちに言う「さようなら」の意味は、
(きょうも一緒に楽しく過ごせましたよね、そうであるならば、あしたもまた元気に来るんだよ)
・結婚生活40年、小さなイライラが毎日積もっていたが、子供が自立したので、熟年離婚に至った「さようなら」の意味は、
(いやいやなんとかやってきたけれども、あなたは全く変わろうとしなかった、そうであるならば、あすからはそれぞれに人生を楽しんでいきましょう)
・夜の街で常連客を見送るホステスさんの「さようなら」の意味は、
(きょうもいっぱいお金を使ってくれてありがとう、そうであるならば、またいっぱい稼いで遊びに来てくださいね)
など。
それだけ、「さようなら」には多様性があります。
なぜ、日本人は言葉自体に意味のない接続詞を別れ言葉として使っているのでしょうか?
日本人はハッキリと言葉にせず、状況を察し合うことを好む傾向があるからだといいます。
さきほどのホステスさんの例でいうと、
「今日もお金を使ってくれてありがとう、そうであるならば・・・、ね」
というように、すべてを言葉に出さない、ハッキリ言わないことを良しとする文化が日本にはあるのです。
「さようなら」の大事な意味は、これまでを確認して、さようであるならば、この先も大丈夫という祈りにつながっているということです。