「差し入れ」ってなに?という話がありました。
もし、贈り物という意味なら、「手みやげ」とか「おみやげ」でもいいはず。
「差し入れ」と「おみやげ」は何が違うのでしょうか?
この2つの言葉が生まれた経緯は全く違う。
お土産
昔は「お土産」のことを文字通り「とさん」と読んでいた。
「とさん」とは、その土地の産物という意味の言葉。
もともと、中国から入ってきた漢語で、日本では平安時代には使われていました。
時がたって室町時代くらいになると、その産物を誰かにあげる贈り物という意味に変わった。
もう一方で、「見上げ」という言葉がある。
これは戦国時代末期頃に現れるが、
品物を見て人に差し上げる、
そこから「みあげ」が発音しやすいように「みやげ」になった。
「とさん」と「みやげ」は意味が似ている。
「みやげ」が「土産」と当て字で書かれるようになった。
差し入れ
差し入れは、「差す」と「入れる」の2語から成り立っている。
もともとは、隙間に物を入れるという意味。
「差し入れ」は古くからある言葉で、それが明治時代にある特定の隙間に入れるという意味に変化。
その特定の場所とは「監獄」、今で言う刑務所。
明治時代の監獄のドアには小さい穴があり、そこから日用品や食料品を入れる。
捕らわれている身で動けずに閉じ込められている。
動けないからよそから入れる、渡す、差し入れる。
閉じ込められている人に隙間から物を渡すことを「差し入れ」というようになった。
1917年(大正6年)に発行された「東京語辞典」にも、「差入(さしいれ)」は「罪人に渡すもの」と書いてある。
もともと捕らえられていた人に対する言葉だった「差し入れ」。
しかし、今は刑務所に入っていない人にも使われている。
そのきっかけは、花柳界(かりゅうかい)、芸者さんたちの世界。
明治時代の芸者さんが、お座敷などにずっといることを監獄に見立て、そこで頂くごちそうなどを「差し入れ」と呼んだ。
その後、寄席芸人や役者など、今で言う業界人たちにも「差し入れ」という言葉が広がり、
やがて、仕事中のオフィスやドラマの撮影現場など、身動きのとれない相手に物を渡すことを「差し入れ」と言うようになった。
「差し入れ」と「おみやげ」の違い
「お土産」とは、その土地のものを周りの人におすそ分けするもの。
一方、「差し入れ」とは、ある場所から身動きのとれない人、またそこにとどまっている人に渡すもの。