ピリリと辛い「トウガラシ」。
インドの「カレー」、韓国の「キムチ」、イタリアの「ペペロンチーノ」、タイの「トムヤムクン」など、
トウガラシは、世界の色々な料理で使われている。
トウガラシの辛み成分「カプサイシン」は、胎座というところで作られている。
トウガラシははなぜ、カプサイシンを作り、辛くなるのか?
科学雑誌「ネイチャー」に、興味深い研究が掲載された。
アメリカアリゾナ州の砂漠に自生するトウガラシを調べたところ、
食べるのは鳥類ばかり。ちなみに鳥は辛さを感じない。
逆に、現地のヤマネズミは辛みを嫌って食べなかった。
そこで、比較のために辛みのない品種を食べさせてみた。
そして、ヤマネズミのフンを観察すると、
フンに残ったタネは哺乳類特有の奥歯で噛み砕かれていて、発芽できなかった。
つまり、トウガラシにとっては食べられ損になってしまう。
このことから、カプサイシンを作るのは、哺乳類に食べさせない戦略だと考えられる。
しかし、人間はこの辛さが病みつきになる人も多い。
なぜ、病みつきになるのか?
トウガラシの辛さを感じると、その時の痛みを抑えるために、βエンドルフィンという脳内物質が放出される。
このβエンドルフィンは、至福感や陶酔感をもたらし依存性もある。
つまり、トウガラシの摂取を繰り返すと、「辛い」「痛い」といった感覚は徐々に弱くなり、「おいしい」「幸せ」といった情動が強くなる。
これが病みつきになるメカニズムだといわれている。

- 作者:スチュアート・ウォルトン
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2019/09/20
- メディア: 単行本