動物のおっぱいの違いは?という話:ヘウレーカ!【2020/01/29】

帯広畜産大学の 浦島 匡 先生が「おっぱい」についての話をしていました。

動物園では、たくさんの動物のおっぱいが見れるといいます。

おっぱいの数

ウサギの乳首を見ると8つある。

子どもをたくさん生む動物には多くの乳首がある。

ヒトもチンパンジーも多くて2頭、2人。

ウサギの場合は1羽から6羽ぐらい子どもを産む。

その子どもが吸い付けるようにおっぱいの数が多い。

おっぱいの成分

ウサギは生まれてすぐは目が開いていない。

どうやって乳首にしゃぶりつくことができるか?

ミルクの中からフェロモンが出ている。

人の場合も同じ、しかしフェロモンが出ている位置が違う。

人の乳首のまわりには乳輪がある。その中にぶつぶつがある。そこからフェロモンが出ている。

成分の違う母乳を出す

カンガルーの乳首は袋の中に4つある。

生まれてきた赤ちゃんは袋までよじ登り入り、4つの中の1つに吸い付く。

するとそこからミルクが出る。あとの3つはミルクを出さないそのままの状態。

しばらくその1つの乳首に吸い付いたまま過ごす。

その乳首は、その子専用のものになる。

カンガルーの乳児は、小さいものから、私たちがイメージする袋の中から顔を出しているような乳児、今度は袋の外に出た子が袋の中に顔を突っ込んで授乳しているものまで、全部「乳児」という。

カンガルーは妊娠期間が約1か月半なのに比べ、授乳期間は1年近くにわたる。

そのため、授乳が必要なきょうだいを抱えることになる。

カンガルーは乳児の成長に合わせた成分の違う母乳をそれぞれ専用乳首から出すことができる。

人間というのは乳首が2つあるが、左の乳首と右の乳首から出ている成分が違うということはありえない。

乳首のない動物

オーストラリアに生息する「ハリモグラ」は、ほ乳類なのに卵で産む

ほ乳類の中で最も原始的と言われモグラなのに地上で暮らす変な生き物。

実は、ハリモグラには乳首がない

腹部に「乳のう」という場所があり、ここにミルクパッチという100ぐらいの小さな穴があいている。

そこを押すとミルクがしみ出してくる。

母乳が汗のようににじみ出て毛にたまる。

赤ちゃんが毛を伝わってくるミルクをなめることで、授乳している。

乳首の誕生

カンガルーと同じ有袋類「オポッサム」。

オポッサムの胎児には乳首が見られない。

しかし、成長段階に応じて現れてくる。

人間の乳首の進化の過程をオポッサムは人生の中でやっている。

・乳腺と毛穴は一体。

・体の成長と共に穴が広がる。

・ある時毛穴が反転する。

・毛が抜ける。

・乳腺が乳首の形になっていく。

このように、我々のような動物も毛穴と乳腺が会合してたが、乳首ができてくる段階において毛が抜ける、そういうところから、乳首の進化ということが見えてくる。

オスに乳首があるのはなぜ?

すべての動物は受精卵の段階ではメスからスタートする。

胚が発達していく段階でオスとメスに分かれていく。

オスにもある乳首はもともとメスであったときの名残であるとされている。

乳首の中には乳腺細胞があり、オスも遺伝子は持っているが、それが発現しない。それがホルモンの働きで遺伝子が発現するようになったのが、母乳をだしている状態。

中には、出産していないメスが偽妊娠で母乳を出すというようなケースが、犬やマングースなどの動物である。

さらに、非常に特殊なケースで、淡路島でヤギのオスが母乳をだしたという話もある。母親ヤギが病気で乳を出せなくなり、鳴いている子ヤギを見て乳を出し始めたのだとか。この個体は2代目3代目も乳を出したことから個体特有の何かがあるのかもしれない。

母乳の成分の違い

イルカ と ヒト とで、母乳の成分を比べてみると、

イルカの方が脂肪分が多い。

冷たい水の中で生きる海のほ乳類たちは皮下脂肪で体温を維持する必要がある。そのために母乳には脂肪分が多い。更にその脂肪を吸収しやすくする物質(ビルベルジン)まで入っている。

牛 と ヒト とで、母乳の成分を比べてみると、

・牛はタンパク質が多い。

ヒトは二足歩行に進化したことから骨盤の形が変化した。そのことにより、赤ちゃんが胎内で育ちきるまで支えきれなくなった。

一方、牛は産まれてすぐに立ち上がることができる。牛は肉食獣に襲われたりすると困るので、急速に成長しなければならない。そのために筋肉や骨格を作る働きをするタンパク質が多く必要となる。

・ヒトは糖質が多い。

未熟なヒトの子どもにとって、肉食獣以外に戦わなければならない敵がいる。それは病原菌などの細菌

腸をキレイにするといわれる「ビフィズス菌」。

善玉菌ともいわれるビフィズス菌が免疫を強化したり、腸を酸性に保ったりすることによって病原菌が住みづらい環境を作る。

お母さんのおなかの中は無菌に近いといわれている。

産道を通過し、生まれる時にお母さんのビフィズス菌をもらうのだが、その量はわずか。

赤ちゃんは急速にビフィズス菌を増やす必要がある。

その時に、欠かせないのが「オリゴ糖」。

赤ちゃんのビフィズス菌は母乳に含まれるミルクオリゴ糖を食べ増えていく。それにより赤ちゃんは細菌に侵されることなく育つことができる。

このように、動物によって、母乳の成分の違いが、子どもを守る生存戦略の違いと深く関わってくる。

それが、ほ乳類動物の進化と深く関わってくる。