武漢の知られざる市民の暮らしの話:ニュースウォッチ9【2020/05/19】

以下は、ソーシャルワーカーの郭晶さんが書いた「武漢封城日記」の抜粋。


1月23日の日記(封鎖初日)

目が覚めたら封鎖のニュースを知って頭が真っ白になった

薬局が入店を制限し始めた

一人の中年女性が「マスクを分けて!」と私に叫んできた

まるでわらをもつかむようだった

1月25日の日記

営業しているのは 葬儀用の花の専門店だけ

店の前にたくさん菊の花が置いてあって 何かを語っているようだった

2月7日の日記

涙が止まらなくて声を出して泣いた

李文亮のことを誰かと語り合いたくて外にでた

長江で 一人のおじさんと出会った

「李文亮が死んだのを知っていますか?」と尋ねると

おじさんは言った

「知っているが話してもむださ」

私は涙をこらえて話を続けた

「彼は最初に警告したのに デマを流したと罪に問われ そして犠牲になったんですよ 悲しすぎませんか?」

おじさんは虚ろな表情で

「大して珍しいことでもないだろ」と言った

私は会話を諦めた

2月11日の日記

スーパーに行った

私は最後の三袋のお肉とビーフジャーキーを買った

この先二週間 毎日お肉を食べられるよう 十四日分に小分けしにした

2月16日の日記

通行証をもらった

三日に一回だから

次に外に出られる日は十九日だ

2月28日の日記

今日の相談は女性ではなく 子どもからだった

「両親が毎日けんかばかりで逃げ出したい でも学校は休校中で 家にいるしかないとても苦しい」

私は 彼の身近に力になってくれる人がいないか 一緒に考えた

4月4日の日記

理不尽に扱われてなくなった人を 政府は英雄と呼び 賛美している

4月8日の日記(封鎖解除の日)

ライトアップのイベントは ロマンを演出しているが

人々の悲しみと困難はかき消されてしまっている

封鎖の解除は 大きな一歩だと思う でも長い間 恐怖に縛られていた 人々の心は

本当に解除できるのだろうか


郭晶 さんによると、

武漢の人たちが何に苦しみ困っているのか自ら発信しないと社会は目を向けてくれません。現実を多くの人に知ってもらいたくて日記を書いてネットに投稿し始めました。

年配の人は文化大革命や飢餓など歴史の悲劇をたくさん経験しています。でも不条理なことが当たり前になって感覚がマヒしてはならないと思います。

封鎖措置によって人と人のつながりは断ち切られてしまいますが、私たちのような存在を知るだけでも心の小さな支えになると思います。

とのことでした。