なぜ子どもは走り回るのか?という話がありました。
これについて、子どもの発達と心理について詳しい 山下直樹 先生(名古屋短期大学 保育科 教授)が説明していました。
子どもは、「早く育ちたい!」という欲求から、とにかく走り回ってしまう。
なぜ、この欲求が生まれるのか?
子どもは、感覚が未成熟だから。
子どもは、大人よりも感覚が発達していない状態で生まれてくる。
例えば、視覚。
生まれたばかりの時は、視力が約0.02ほどで、色の見分けはほぼつかない。
また味覚は、甘味・うま味・塩味を好み、酸味や苦味をおいしいと感じるまでには、経験が必要だと言われている。
こういった未成熟は感覚は、適切な刺激を与えて、関係するその部位を働かせることで成長する。
ミルクから離乳食に変わることで、いろんな味を覚えたり、
だっこして、話しかけたりすることで、触覚や聴覚を刺激したり、
体の機能や部位を使うことで、感覚が育つ。
しかし、子どもは成長していくにつれ、与えられるだけではもの足りず、自分から刺激を求めるようになる。
「早く大人と同じように育ちたい!だからもっと刺激をくれ!」となる。
そうすると、自分からいろんな動きをするようになってくる。
その 一つが「走る」。
子どもは、約8か月ごろからハイハイやつかまり立ち、1歳前後でひとり歩きや方向転換、
そして、1歳半ごろから走るようになると言われている。
こうした動きは、主に、運動感覚と平衡感覚と呼ばれるものを育てる。
運動感覚とは・・・筋肉や関節のコントロール、自分の体の大きさや手足の位置などを知る。
平衡感覚とは・・・体の傾きや前後左右上下回転などの動きを感じる。
さまざまな動きをして、この2つの感覚が育っていくと、子どもはより複雑な動きができるようになっていく。
しかし、感覚が未成熟のうちは、体をうまくコントロールできない。
なので、早くコントロールできるようになるために、
「もっとスピード出るかな?」「こんな走り方できるかな?」なんていう感じで、より強い刺激を求めて走り回る。
このように、「早く育ちたい!」という欲求は、運動感覚や平衡感覚を身につけようとする本能。
それが、子どもたちを走り回らせている。
具体的に、走るメリットは?
・地面を蹴るので、歩く時よりも筋肉や骨への刺激が強い。
・蹴って前に進むので、着地する時のバランスも必要になる。
・足の裏から伝わる地面の感覚やスピードと距離の感覚が育つ。
などがある。