野球の監督だけが、ユニフォームを着るのはなぜ?という話がありました。
これについて、野球の歴史に詳しい 鈴村裕輔先生(名城大学 外国語学部 准教授)が説明していました。
野球の監督が、ユニフォームを着ているというのは、
野球が誕生した当初、監督も選手として試合に出ていたから。
野球の前身である「タウン・ボール」という球技があって、その名残が現在まで残っている。
タウン・ボールとはどんな球技なのか?
塁と塁を結ぶ辺の中央に、バッターボックスがあり、ヒットを打つと1塁へ。
そのランナーが2塁、3塁と進み
4塁に到着すると1点が入るという、現在の野球とほぼ同じルール。
1840年代のニューヨークでは、消防団員の結束力を強めるためにも、行われてきた。
それが、やがて、他の町の人たちにも普及していった。
こうして、瞬く間にアメリカ中に広まり、競技人口が増えていった。
町を越え初めて会う人とも試合が行われた。
知らないチームと対戦するとなると、初めて会う者同士なので、挨拶をしないといけない。
あるいは、自分たちのチームを代表して意見をする。
そういった存在が必要になってきた。
そこで、登場したのが現在で言うところの監督に相当する役割の人。
選手の代表者が監督を任されることになった。
ただ、監督といっても、一旦試合が始まれば、自分もユニフォームを着て実際に試合に出場する。
監督は、試合の中では選手であり、選手が監督の役割を果たしていくことが、当時のタウン・ボールの日常的な光景だった。
そのタウン・ボールは、1850年代後半から、「ベースボール」と呼ばれるようになった。
さらに、その後、プロの野球チームが誕生すると、プロチームの監督が行うべきことは増えていく。
そうなってくると、選手をしながらの監督は難しくなってきた。
指示だけを出す専門職としての監督というものが、求められてきた。
そういった背景があり、昔のタウン・ボール時代の名残で、監督は、今でも、ユニフォームを着るようになっている。
一方で、メジャーリーグの公式ルールブックには、「監督がユニフォームを着なければならない」ということはひと言も書かれていない。
ユニフォームの着用が義務づけられているのは選手だけ。
厳密に規則を適用すれば、監督はどんな服装でもかまわない。
しかし、実際には、ユニフォームを着ていない監督はほとんどいない。
過去に、フィラデルフィアアスレチックスの監督だった「コニー・マック」は、スーツを着て指揮をとっていた。
ユニフォームを着るのはフィールドに立つ選手に限るべきだという彼の信念に基づいてスーツ姿で監督として活躍し続けた。
ちなみに、WBCのような国際的な試合でも監督がスーツを着ても全く問題ない。