カレーうどんを食べた後に、スープがシャバシャバになる謎の現象がある。
なぜ、トロトロだったものが、
わずかな時間でシャバシャバになるのか?
これについて、槻木恵一 先生(神奈川歯科大学 教授)が説明していました。
カレーうどんを食べていると、シャバシャバになるのは、スープにあなたのだ液が侵入しているから。
例えば、料理にとろみをつけたい時、かたくり粉を使う。
かたくり粉は、じゃがいもなどのデンプンを含んだイモを乾燥させて作ったもの。
そのデンプンが水を含んで加熱されると、糊(のり)のようになる「糊化(こか)」という現象が起きて、トロトロになる。
では、カレーうどんがシャバシャバになるのと、人のだ液には、どのような関係があるのか?
ここで、実験。
人間のだ液に含まれている「アミラーゼ」という成分を、カレーうどんに、入れて、5分待つ。
すると、食べた時と同様に、スープはシャバシャバになった。
入れる前と後のスープのねばりけを専用の機械で測ってみると、
入れる前は、2.9デシパスカルだったのが、入れた後は、0.0デシパスカルになった。
これは、中濃ソースから水くらいのとろみに変わったことを意味する。
つまり、このアミラーゼこそが、カレーうどんをシャバシャバにする原因。
アミラーゼとは、だ液に含まれる食べ物を消火するための酵素。
だ液に含まれるアミラーゼは、デンプンを分解して、「デキストリン」と「麦芽糖」の2つの成分に分解して、吸収しやすくしている。
あの「ごはんを噛めば噛むほど甘くなる現象」も、アミラーゼが原因。
そんなアミラーゼを含んだだ液が、
箸でうどんをつかんだり、
スープを飲んだりして、
カレーうどんを食べる動作の中で、アミラーゼが器に侵入。
すると、アミラーゼが、スープの中のデンプンを分解。
とろみのもとであるデンプンが消えたことで、シャバシャバになっていた。
アミラーゼは、非常に強力な酵素で、個人差はあるが、
1日の生活で出る1リットル分のだ液アミラーゼがあれば、
理論上は、カレーうどん1400杯分のとろみを消すことができる。
なので、少しでも、だ液が箸についたり、スープを飲んだりするだけで、
1杯のカレーうどんをシャバシャバにするには、十分なアミラーゼが侵入している。