なぜホワイトボードに書いた文字は消えるのか?という話がありました。
これについて、大手筆記具メーカーで研究・開発を担当する浅田勝久さん(品質管理部 課長)が説明していました。
ホワイトボードは、約60年前アメリカで誕生した。
日本では、明治以降、主に、学校などの教育現場やオフィスでは、黒板とチョークが使われていた。
そんな中、1966年(昭和41年)に、画期的な筆記システムとして登場したホワイトボード。
ペンで書いた文字が消える、手がチョークの粉で汚れない、など日本でも注目された。
しかし、最初に販売されたホワイトボードは、話題になったものの、評判はあまり良くなかった。
発売当初のホワイトボードは、クレームが続出。
最初のマーカーに使われたインクは、現在のものと成分が違い、書いた文字がちゃんと消えなかった。
そのため、開発者たちは、取引先へバケツと雑巾を持って出向き、謝罪しながら拭き取るといった苦労もあった。
その後、最初の発売から8年かけて現在のインクに改良。
油性マーカーのインクは、溶剤と呼ばれる「アルコール」、色の元になる「着色剤」、書かれたものを固定する「特殊樹脂」、この3種類の成分から出来ている。
これを均一に混ぜ合わせることで、拭いても消えないインクになる。
これを容器に入れると、油性マーカーとして使えるようになる。
しかし、このマーカーで、ホワイトボードに文字を書いて、拭いて消そうとすると消えない。
ボードに、油性マーカーで文字を書くと、約10秒後にアルコールが蒸発。
すると、残った特殊樹脂が接着剤として働くため、着色剤はボードの表面にくっつき、拭いても消えなくなる。
一方、ホワイトボードに使うマーカーの場合、先ほどの3つの成分に、「剥離剤」を加える。
剥離剤とは、油の一種で、建物の壁に塗ってある塗料を剥がす時や、化粧落としなどに使われる液体。
剥離剤と特殊樹脂は相性が悪く、互いに反発しあう。
そのため、アルコールが蒸発してなくなると、
一緒にいられなくなるので、剥離剤は特殊樹脂に押し出されるように、外側へとにじみ出していく。
さらに、液体である剥離剤は、外側へと押し出された後、着色剤とくっついた特殊樹脂を包み込む。
この時、文字が板面に直接くっついているように見えるが、板面と文字の間には、剥離剤の膜があるため、文字は浮いている状態。
これをボード消しでこすると、
剥離剤ごと、文字の部分も一緒に拭き取られるため消える、という仕組み。
ちなみに・・・、
ホワイトボードに間違って油性マーカーで書いて消えなくなってしまった場合、
ホワイトボードのマーカーで文字を上からなぞってから拭くと、消える。