なぜ飛行機の窓は丸いのか?という話がありました。
これについて、航空力学を研究している鈴木真二 先生(東京大学 名誉教授)が説明していました。
まず、バスや建物の窓を見ると、四角い窓が多い。
しかし、飛行機の窓が丸いのは、
1949年に、世界初のジェットエンジンを搭載し初飛行した、
「コメット」という飛行機がキッカケだった。
イギリスで造られたジェット機「コメット」は、世界で初めて、気流が安定する高さ1万メートル以上を飛べる旅客機として、話題になった。
しかし、高さ1万メートルを飛んだことにより、ある悲劇が起こった。
1954年にコメットが立て続けに2度、空中分解して墜落する事故が発生。
この一連の事故は、「コメット連続墜落事故」として社会問題となり、
当時のイギリス首相のウィンストン・チャーチルが、
「資金と人員を惜しまず、徹底調査せよ」と声明を出す事態に。
こちらが、海に沈んだコメットのパーツを組み立てた写真。
詳しく調査した結果、機内に高い圧力がかかったことで、天井部の小窓に亀裂が入り、
空中分解をしたことが推測された。
そして、その推測のもと、機体の耐久性に問題がなかったか、調査を開始。
加圧実験をした。
幅7m、長さ34m、深さ5mの巨大水槽にコメットを沈め、
機内に水を入れることで、外側よりも中からの圧力が大きい状態、
つまり、空中分解した高度1万メートルを再現した。
すると、当初は5万4000回の飛行に耐えられる設計だとされていたコメットの機体が、
3060回相当の飛行回数の圧力で、機体に亀裂が発生した。
なんと、コメットの耐久性は、当初の予想の17分の1以下と判明。
その大きな原因が、四角い形をした窓だった。
こちらが墜落したコメットの窓のパーツ。
実は、コメットが造られた以前の飛行機は、四角い形の窓が主流だった。
1940年代までは、プロペラ機が主流で、
雲の下、高さ3000〜5000m程度と、低い所を飛んでいた。
しかし、雲よりも高い、約1万メートル以上の高さを飛ぶコメットが誕生したことで、
窓の形に大きな変化が起きた。
高さ1万メートルを飛ぶ飛行機の場合、機内の酸素が薄くなり、人間は呼吸できなくなってしまう。
そこで、ジェットエンジンから空気を入れ、機内に圧力をかけ、
人間が快適に呼吸できるようにしている。
しかし、機体にずっと圧力がかかると、窓の角に大きな負担がかかる。
そのため、何回も離着陸を繰り返すと、金属疲労が起こり、その周囲に亀裂が入ってしまう。
なので、窓の角を丸くして、負荷を小さくする必要があった。
角が丸いものと四角いものに圧力をかけ、コンピューター解析をしてみると、
丸い方は圧力が分散しているのに対し、四角い方は角に圧力が集中していることが分かる。
コメットの窓も、これを意識して、耐久性を上げるために、四隅は、少しだけ丸められてはいたが、
その丸みの割合が小さかった。
そのため、窓の角に大きな負荷がかかったことで、金属疲労によって亀裂が入り、
機体が空中分解してしまったと、結論づけた。
この調査結果を受け、コメットの窓は、四隅の丸みの割合を高くしたより丸い窓にし、かかる圧力を分散したことで、コメットの事故はなくなった。
その後、ジェット機の窓は丸い窓になり、事故が激減し安全になった。