なぜ飛行機の窓は丸いのか?:チコちゃんに叱られる!【2024/01/26】

なぜ飛行機の窓は丸いのか?という話がありました。



これについて、航空力学を研究している鈴木真二 先生(東京大学 名誉教授)が説明していました。

まず、バスや建物の窓を見ると、四角い窓が多い。

しかし、飛行機の窓が丸いのは、

1949年に、世界初のジェットエンジンを搭載し初飛行した、

「コメット」という飛行機がキッカケだった。

イギリスで造られたジェット機「コメット」は、世界で初めて、気流が安定する高さ1万メートル以上を飛べる旅客機として、話題になった。

しかし、高さ1万メートルを飛んだことにより、ある悲劇が起こった。

1954年にコメットが立て続けに2度、空中分解して墜落する事故が発生。

この一連の事故は、「コメット連続墜落事故」として社会問題となり、

当時のイギリス首相のウィンストン・チャーチルが、

「資金と人員を惜しまず、徹底調査せよ」と声明を出す事態に。

こちらが、海に沈んだコメットのパーツを組み立てた写真。

詳しく調査した結果、機内に高い圧力がかかったことで、天井部の小窓に亀裂が入り、

空中分解をしたことが推測された。

そして、その推測のもと、機体の耐久性に問題がなかったか、調査を開始。

加圧実験をした。

幅7m、長さ34m、深さ5mの巨大水槽にコメットを沈め、

機内に水を入れることで、外側よりも中からの圧力が大きい状態、

つまり、空中分解した高度1万メートルを再現した。

すると、当初は5万4000回の飛行に耐えられる設計だとされていたコメットの機体が、

3060回相当の飛行回数の圧力で、機体に亀裂が発生した。

なんと、コメットの耐久性は、当初の予想の17分の1以下と判明。

その大きな原因が、四角い形をした窓だった。

こちらが墜落したコメットの窓のパーツ。

実は、コメットが造られた以前の飛行機は、四角い形の窓が主流だった。

1940年代までは、プロペラ機が主流で、

雲の下、高さ3000〜5000m程度と、低い所を飛んでいた。

しかし、雲よりも高い、約1万メートル以上の高さを飛ぶコメットが誕生したことで、

窓の形に大きな変化が起きた。

高さ1万メートルを飛ぶ飛行機の場合、機内の酸素が薄くなり、人間は呼吸できなくなってしまう。

そこで、ジェットエンジンから空気を入れ、機内に圧力をかけ、

人間が快適に呼吸できるようにしている。

しかし、機体にずっと圧力がかかると、窓の角に大きな負担がかかる。

そのため、何回も離着陸を繰り返すと、金属疲労が起こり、その周囲に亀裂が入ってしまう。

なので、窓の角を丸くして、負荷を小さくする必要があった。

角が丸いものと四角いものに圧力をかけ、コンピューター解析をしてみると、

丸い方は圧力が分散しているのに対し、四角い方は角に圧力が集中していることが分かる。

コメットの窓も、これを意識して、耐久性を上げるために、四隅は、少しだけ丸められてはいたが、

その丸みの割合が小さかった。

そのため、窓の角に大きな負荷がかかったことで、金属疲労によって亀裂が入り、

機体が空中分解してしまったと、結論づけた。

この調査結果を受け、コメットの窓は、四隅の丸みの割合を高くしたより丸い窓にし、かかる圧力を分散したことで、コメットの事故はなくなった。

その後、ジェット機の窓は丸い窓になり、事故が激減し安全になった。