時間はどうやって決めているのか?という話がありました。
これについて、日本の時刻を管理している、
井戸哲也さん(情報通信研究機構 時空標準研究室 室長)が説明していました。
東京都小金井市にある情報通信研究機構 通称「NICT」。
NICTは、日本の標準時を決めて全国に送信している国の研究機関。
テレビで表示されている時間もNICTが決めた時間をもとにしている。
ところで、「時間」と「時刻」は違う。
時間は、時の長さを表すもの。
一方、時刻は時の流れの1点を示すもの。
今回の質問を正しくいうと「時刻はどうやって決めている?」となる。
では、時計の時刻は、どうやって決めているのか?
昔は、太陽の動きで導き出されていた。
しかし、場所により、また表示方法も世界でバラバラだった。
そこで、1884年、世界共通の時刻を決めようということになった。
ロンドンにあるグリニッジ天文台の南北を通る線が経度0度の「本初子午線」。
そして、各国の標準時は、経度を15度隔てるごとに、1時間ずつの時差を持つ時刻を使うことにした。
これが、地球の自転をもとに考えられた「天文時」といわれるもの。
もともとは、そうして時刻を決めていたが、「天文時」だけに頼ると、時刻がズレてしまうことがわかった。
私たちが、24時間と考えるのは、
例えば、太陽が、お昼、真南にある時から、次に同じ位置に来るときまでの時間。
技術が発達して、人工的な時計を正確に作ることができるようになると、
太陽が真南の一番高いところに来る時刻が、
12時から早くなったり遅くなったりすることが起きた。
地球は、月の引力による潮の満ち干などで自転の速度が変わる。
そうすると、真南にあった太陽が同じ場所に戻る時刻は、時計の示す12時とはズレる。
太陽を基準にすると、1秒が長くなったり、短くなったりしてしまう。
1秒の長さが定まらないと、例えば、
あなたがカップラーメンを食べる時、3分間待っていても、日によって、
麺が、かたかったり、やわらかかったり、伸び具合が変わることになってしまう。
そこで、天文学ではなく、量子力学を使って、新たに1秒の長さを決めることにした。
1967年に「秒の定義」を決めた。
1秒は、セシウム133原子の基底状態の
2つの超微細構造準位の遷移に対応する放射の周期の
91億9,263万1,770倍の継続時間
簡単に言うと、「セシウム原子時計」という特殊な時計を使って、1秒を決めようとなった。
これは、振り子をイメージするとわかりやすい。
この原子時計の中では、振り子が動いていて、
91億9,263万1.770回往復したら、それを1秒とするという時計。
この原子時計を使えば、1秒が長くなったり短くなったりせず、正確に測れる。
しかし、原子時計は、時刻を刻むものではなく、正確に1秒間を測れる時計。
言うなれば、ストップウォッチのようなもの。
NICTの建物の中には、18台の原子時計を稼働させて1秒を測っている。
それでも、差はでる。
原子時計は、日本だけでなく、世界で400台ある。
世界中にあるので、どこかの国の原子時計に不具合が起きても、
支障が出ないようになっていて、400台の平均をとることで、より正確な1秒を計測できる。
1秒を割り出したら、過去の時刻に足して積み上げて、時刻を決めている。
1958年1月1日の0時0分0秒から、一秒一秒積み重ねて時刻を表示する。
これを「国際原子時」という。
この国際原子時に対して、調整を入れた時刻が「協定世界時」。
原子時計だけの積み重ね → 「国際原子時」
太陽の動きに合わせたもの → 「協定世界時」
国際地球回転事業という機関が、
「太陽の動きと原子時がずれそうだから、1秒足しましょう」と、
半年前に決定して、世界中に通知し、それに応じて、
その年の正月もしくは7月1日に、世界中が一斉に、1秒を入れる。
これを「うるう秒」と呼ぶ。
普通は数えない、60秒目を入れている。
そうして、調整された協定世界時に、9時間足したものが、「日本標準時」となる。
こうして、決められた日本標準時は、
・佐賀県 はがね山 標準電波送信所
・福島県 おおたかどや山 標準電波送信所
の2か所から全国に送られている。
ちなみに・・・、
2035年以降、うるう秒の実質的な廃止が決定した。
その理由は、インターネットの世界で、うるう秒を入れることで、
メールや取引が実際の時刻よりも早く送信されてしまうなど、
不具合が生じるためということで、IT業界から、
「うるう秒をやめてほしい」という要望が出たから。
「うるう秒をやめた後、どうするのか?」については、
それは、2035年までに決めるということだけ決まっている。